法律相談Q&A
成年後見について
Q1. 成年後見とはどのような制度ですか?
A1.
認知症や知的・精神障害などによって判断能力が十分でない方は、お金の管理や契約などの法的手続きを行うことが困難な場合があります。そのような方のために、法的手続きの支援をする援助者を選び、ご本人をサポートする制度です。
Q2. 成年後見にはどのような種類がありますか?
A2.
成年後見は大きく分けて、判断能力が不十分になってから利用する「法定後見」と、判断能力が不十分になる前に利用する「任意後見」の2種類があります。
法定後見制度とは、判断能力が不十分な方に対して、家庭裁判所が援助者となる後見人・保佐人・補助人のいずれかを選任する制度です。
任意後見制度とは、判断能力が不十分になる前に、将来判断能力が低下した場合に備えて、予め援助者となる任意後見人を自ら選び、お願いしたい手続内容を任意後見契約で決めておく制度です。
Q3. 法定後見制度の「後見」「保佐」「補助」にはどのような違いがありますか?
A3.
法定後見制度は、ご本人の判断能力の程度によって「後見」「保佐」「補助」の3つの類型に分けています。判断能力は医師の診断書によって決定され、どの類型に該当するかによって、援助者となる後見人・保佐人・補助人に与えられる権限の範囲が異なります。
判断能力低下の程度が最も重い「後見」に該当する場合、後見人には広範囲な権限が与えられ、後見よりも判断能力低下の程度の軽い保佐、最も程度の軽い補助についてはそれぞれ権限に制限が設けられています。
法定後見の種別 | 後見 | 保佐 | 補助 |
---|---|---|---|
判断能力 | 欠けている | 著しく不十分 | 不十分 |
援助者 | 後見人 | 保佐人 | 補助人 |
援助者に与えられる権限 | ・原則としてすべての法律行為の代理権・取消権(日常生活に関する行為は除く) | ・民法13条1項記載の重要な法律行為についての同意権・取消権 ・申立人の請求により裁判所が審判で定めた民法13条1項記載以外の法律行為についての同意権・取消権 ・申立人の請求により裁判所が審判で定めた特定の法律行為についての代理権(日常生活に関する行為は除く) |
・申立人の請求により裁判所が審判で定めた民法13条1項記載の重要な法律行為のうち、特定の法律行為についての同意権・取消権 ・申立人の請求により裁判所が審判で定めた特定の法律行為についての代理権 (日常生活に関する行為は除く) |
申立てすることができる人 | 本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市区町村長など | 同左(代理権の審判に本人の同意が必要) | 同左(本人の同意が必要) |
Q4. 法定後見等(後見・保佐・補助)を開始するにはどうしたらいいですか?
A4.
ご本人の住所地を管轄する家庭裁判所に、法定後見等開始の申立てを行います。申立てすることができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市区町村長等です。
保佐開始の申立てにあたって、保佐人に代理権を付与する申立てをあわせて行う場合には、ご本人の同意が必要となります。補助開始の申立ての場合には、必ずご本人の同意が必要となります。
Q5. 法定後見等(後見・保佐・補助)の申立ては、自分でしなければならないのですか?
A5.
司法書士は法定後見等(後見・保佐・補助)開始の申立書類の作成ができます。申立書類の準備をご自分で行うことが難しい場合には、司法書士にご相談ください。
Q6. 法定後見の成年後見人等(後見人・保佐人・補助人)には誰がなるのですか?後見人等候補者が必ず就任するのですか?
A6.
ご本人の親族の方が後見人等候補者となり、そのまま後見人等に就任するケースもありますが、候補者に挙げた方が必ず選ばれるとは限りません。ご本人の心身の状態や生活状況、財産状況その他の事情を踏まえて裁判官が決定します。裁判所の判断で司法書士や弁護士、社会福祉士等の専門職が選任されることがあります。なお、後見人等が裁判所に対し報酬付与の申立てをすることで裁判所は後見人等の働きに見合った報酬額を決定し、後見人等はご本人の財産から報酬の支弁を受けることができます。
Q7. 成年後見人等(後見人・保佐人・補助人)に選任されたら、まず何をすればよいですか?
A7.
成年後見人等に選任されたら、選任後定められた期限までに裁判所に、初回の報告書(財産目録・年間収支予定表等)を作成し、提出してください。初回の報告書を提出するまでは、急迫の必要のある行為以外はできません。
保佐人・補助人の場合、初回の報告は付与された代理権の内容により、家庭裁判所から求められる場合があります。
なお、後見人・保佐人・補助人は、一定期間ごとに、自主的に報告書や財産目録等を裁判所に提出する必要があります。
Q8. 本人の介護や身元保証・身元引受、手術に関する同意なども成年後見人等(後見人・保佐人・補助人)にお願いできますか?
A8.
成年後見人等(後見人・保佐人・補助人)の職務内容は、ご本人の財産を代わりに管理する「財産管理」と並んで、ご本人の生活や健康を維持するための「身上監護」があります。
「身上監護」には、ご本人のお住まいの確保や施設への入所契約、介護契約等の法律行為が含まれますが、実際にご本人を介護するような事実行為は含まれません。
身元保証・身元引受、手術等の医療行為に関する同意もできないため、原則として親族の方などに行っていただくこととなります。
Q9. 成年後見人等(後見人・保佐人・補助人)の職務はいつまで続くのですか?途中で辞任することはできますか?
A9.
成年後見人等(後見人・保佐人・補助人)の職務は、ご本人の判断能力が回復するまで続きます。ご本人の「不動産を売却するため」や、「遺産分割をするため」等の理由で後見等開始の申立てを行った場合でも、その手続きが終了したからといって職務が終了するわけではありません。
ご本人が死亡した場合には、成年後見人等の職務は終了となり、裁判所に報告して、相続人にご本人の財産を引き継ぐ必要があります。
成年後見人等を辞任する場合には正当な事由(成年後見人等が病気になってしまった、職場や家庭の事情で遠方に引っ越すことになり、職務遂行が困難である等)と裁判所の許可が必要です。
Q10. 成年後見人等(後見人・保佐人・補助人)に就任したら自由に本人の財産を使うことができるのですか?
A10.
成年後見人等(後見人・保佐人・補助人)はご本人の財産を預かり、代わりに管理する職務を行います。あくまでもご本人の財産であるため、たとえ親族であろうとも他人のためにお金を貸したり、親族の支出のためにご本人の財産から支弁する等、本人にとって不利益となるような行為は原則できません。
Q11. 成年後見監督人とはなんですか?
A11.
成年後見監督人等(成年後見監督人・保佐監督人・補助監督人)は、成年後見人等が適正に職務を行っているかどうかを監督するために、裁判所に選任された人のことです。成年後見人等が親族等で経験不足である場合や、資産が多額であり管理が難しい場合等で、裁判所が必要と認める場合には、司法書士や弁護士等の専門職が後見監督人に選任される場合があります。成年後見監督人には裁判所が決定した金額の報酬が発生し、ご本人の財産から支出することとなります。
Q12. 本人の財産がほとんどなく、後見人・保佐人・補助人・監督人等に報酬が支払えない場合はどうすればよいのですか?
A12.
成年後見制度はご本人の財産の中から後見人等の報酬を支払っていただくのが原則ですが、収入が少ない方や生活保護受給中の方でも利用が可能な制度です。様々な市区町村で後見人等報酬の助成に関する制度が設けられていますので、詳細はご本人のお住まいの地域の市区町村へお問い合わせください。
Q13. 任意後見契約とはどのようなものですか?
A13.
任意後見契約は、ご本人が元気なうちに、将来判断能力が低下した場合に自分の代わりに後見人として財産管理や身上監護等の手続きを行ってもらうことを受任者に委任する契約です。個人間の契約であるため、委任する内容は自由に当事者間で決めることができます(ただし、違法・無効な内容のものは不可)。また、法定後見の場合、後見人等は裁判所が決定しますが、任意後見の場合は本人が自分で信頼できる人を選ぶことができます。
Q14. 任意後見契約の手続きはどのように行うのですか?
A14.
任意後見契約の締結は、必ず公正証書で行う必要があります。任意後見契約書の内容については公証人からアドバイスはもらえますが、当事者で決める必要があります。司法書士は任意後見契約書の作成手続を行うことができます。契約書の作成をご自分で行うことが難しい場合には、司法書士にご相談ください。
Q15. 任意後見人はいつから職務を開始するのですか?
A15.
任意後見契約締結後、本人の判断能力が低下した場合には、家庭裁判所に対し、任意後見監督人の選任申立てを行います。任意後見監督人が選任されてはじめて、任意後見契約の受任者は任意後見人として職務を開始することとなります。申立てすることができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者です。
任意後見監督人は、任意後見人が適正に職務を行っているかどうかを監督するために、裁判所に選任された人のことです。任意後見の場合、監督人は必ず選任されます。ご本人の親族等よりも司法書士や弁護士等の専門職が後見監督人に選任される場合が多いです。任意後見監督人には裁判所が決定した金額の報酬が発生し、ご本人の財産から支出することとなります。
Q16. 任意後見契約の内容を後から変更したり、解除することはできますか?
A16.
任意後見監督人の選任申立がされる前であれば、任意後見契約をいつでも内容を変更したり、解除したりすることができます。ただし、契約当事者の変更は、変更ではなく解除して契約をやり直す必要があります。また代理権の範囲の変更も、同じく解除して契約をやり直す必要がありますが、代理権の範囲の追加の場合については、追加部分だけで新たな契約を締結することは可能です。契約変更や解除の手続きは公正証書によって行います。
任意後見監督人が選任された後は、本人の意思能力に問題があるため契約内容の変更は難しいですが、任意後見契約の解除については、正当な事由と裁判所の許可がある場合に限り、することができます。
Q17. 任意後見人へ支払う報酬はどうやって決まるのですか?
A17.
任意後見人に支払う報酬は任意後見契約の中で、本人と受任者の話し合いで決めます。親族が任意後見人となる場合には、無報酬であることもあります。